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Research

 私たちの研究目標は、脳や脊髄の障害を持つ方に対する支援の効果を、臨床神経生理学に基づき検証・解明することです.脳波研究による脳機能および病態解明を行い、これからの健康科学(神経科学リハビリテーション)の確立を目指しています.

 また、情動や感情といった前意識・意識にある“こころ”の状態を明らかにする研究(応用脳科学)も行っています.


Technique

 ERP

 事象関連電位(Event-Related Potentials; ERP(s))とは、大脳皮質のニューロン活動によって生じる電位(数十μV)を計測する脳波(electroencephalogram; EEG)の一種です.

 いくつかある種類の中で、事象(刺激)に対する被験者の認知的態度を反映する内因性の電位をERPといいます(丹羽, 鶴, 1997).ERPには、様々な認知処理に対応して特定の潜時に特徴的な成分が出現します.そのため、『感覚-知覚-認知』の過程の測定に幅広く用いられています.


 LORETA

 LORETA (low resolution brain electromagnetic tomography analysis)とは、Pascual-Marqui RDによって開発された脳機能イメージング解析であり、脳波や脳磁図による脳内神経活動を脳図譜(標準脳)へ重畳し描くことができる解析手法です.1994年に初めてLORETAが報告され、近年発表されたsLORETA/eLORETAでは6239 voxelに分けられた脳部位の電位分布描画に加え、脳部位間における機能的連関LORETA connectivity)ネットワークeLORETA-ICA)の解析が可能となっており、健常者データベース(プログラム内に搭載)との比較も行えるようになっています.


Microstate segmentation

(Michel MC, et al. 2009より引用)            

 Microstate segmentation解析とは、Lehmannらによって発表された、脳波計測から得られたデータをクラスター解析し、ほぼ安定したtopographyが連続して出現する区間、つまり脳の「機能的微小状態(Microstate segmentation)」と決定する解析手法です.



Projects

 Neuro-reorganization

※ Neuro-reorganization(脳内神経機能再編成)へ向けた私たちの取り組みを一部紹介致します.

 

 研究 : 【運動錯覚と運動イメージを同期させたニューロリハビリテーションシステム開発 】

  

ー 運動主体感を中心とした身体運動制御システム ー

 

 これまで私たちは、脳卒中を原因とする感覚運動障害患者の脳機能再編成へ向けた治療法開発に取り組んできました.脳卒中によって身体に麻痺が生じると、意図的随意的に動かすことが困難になることに加えて、自身の身体が自分の者であるという身体意識(脳内身体表象)が低下します.

 本来、ヒトが運動を実行できる背景には「身体制御システム」(上図)が存在しますが、脳機能が障害されると、外部からの感覚情報を入力処理できなくなることに加え、脳内で予測とフィードバックされた情報を比較照合するシステムに異常をきたします.さらに、高次のメタ表象の障害も加わり、脳内で創出される”自分自身で動かしている”という意識が低下します.

 このような障害に対して、脳内で意図的(予測的)に創出した四肢の運動と実際の感覚運動情報と比較照合させる能力の改善を目指すニューロフィードバックシステム(imagery Neurofeedback-based multi sensory systems: iNems)トレーニングを開発し、効果検証を行いました.

 

- iNemsの概要 -

  運動をイメージしているときの脳神経活動パターンは、多周波数帯域で捉えなければなりません.

我々は、θ波、α波およびβ波帯域の出現周波数パターン(特許第6553492号)の解析を行うことで脳内運動イメージ時の神経活動を検証しました.

 

  

 6週間のトレーニングの結果、イメージ中のα波帯域(μ波)において、補足運動野を中心とした感覚運動関連領域(青丸内)の神経活動性が高くなりました.また、運動主体感や身体所有感、患側肢の使用頻度やQOLにも改善を認めました.今後、より多くの方々へ本トレーニングを実施し、効果について深く検証していく予定です.

 

Kodama T, et al., Clin EEG Neurosci. 2019

片山&兒玉, 理学療法学, 2019

 


痛みをイメージ化する

 

岡崎章教授 (拓殖大学工学部デザイン学科)・大姶良義将先生(工学研究科)が開発された「痛みの強さと周期を表現できる評価ツール:Pamin」を用いて現在共同研究中!

言語化しにくい痛みの本質を評価できるツールとして期待されています。

日本語版 KVIQ

 

 Malouinらによって開発されたイメージ能力評価スケール「The Kinesthetic and Visual Imagery Questionnaire: KVIQ」の日本語版を作成!

 

 

 

 



 研究 : 【振動刺激による運動錯覚時の脳内神経活動の解明】

 

-例えば、肘を曲げる筋(腱)に振動刺激を与えると、肘が伸びているような感覚(錯覚)を感じる(運動錯覚)-

 

 これまで私たちは、振動刺激により生成される脳内運動錯覚(上図)が脳機能へ及ぼす影響について、実際の運動実行時や運動イメージ想起時に減衰するとされる脳波Muリズム(μを神経生理学的指標として用い、LORETAにて解析を行いました.

 その結果、振動刺激や運動実行条件時に、大脳皮質の感覚運動領域(補足運動野含め)におけるμの減衰(事象関連脱同期)を認めました。さらに、両条件を比較した結果、本領域の神経活動性に有意差を認めませんでした.

 このことは、運動錯覚時と運動実行時の本領域における(量的)神経活動性が同様である可能性を示唆しています.さらに私たちは、脳機能障害(脳血管疾患)を発症した患者さんにおいても、μが減衰することを明らかにしています.

 一方、脳内運動錯覚生成には、運動イメージ能力が重要とされています.これらの関連性について今後詳細に検証し、効果をより深く検討することがニューロリハビリテーション創出への一助となると考えています.

 

兒玉ら, 臨床神経生理学 39(6), 2011

兒玉ら, 理学療法学 41(2), 2014

兒玉ら, ヘルスプロモーション理学療法研究 4(1), 2014

 


 研究 : 【環境色が認知機能へ及ぼす影響】


 これまで私たちは、赤色(赤)や緑色(緑)といった色彩環境が、視覚オドボール課題(認知機能)へどのよな影響を及ぼすかについて、事象関連電位P300成分およびLORETAを用いた解析により比較検討を行ってきした.それらの結果、赤では、P300成分は最大振幅が増大し、潜時は短縮しました.また、LORETAでは情動や遂行機能と深い関係を持つとされる下側頭回、扁桃核、前帯状回、Brodmann area 46に有意に高い神経活動を認めました.これらのことから認知機能は色彩環境の影響を受けることが明らかとなりました.

 

            兒玉ら, Brain science and mental disorders 18(1), 2007

                        ・兒玉ら, 臨床神経生理学, 2007

                        ・兒玉ら, 臨床神経生理学, 2008

                                                                        ・Kodama T, et al., J Neurotrauma,  2012 

                         ・Kodama T, et al., JPTS, 2016

 



Neuro-feedback

※ ニューロフィードバックに関する取り組みを一部紹介します。


 研究 : 【難治性疼痛患者に対するニューロフィードバックトレーニングの効果検証】


 <ニューロフィードバック(neuro-feedback)トレーニングとは>


 ニューロフィードバックトレーニングとは、脳機能状態を(生体から得られる信号としての)脳波などを用いて計測・分析し、その結果を同期的にご本人へ返す(フィードバック)ことで、自身で安定した良い脳の状態を作ることを目指すトレーニングです.慢性的な痛みや不安症状がみられる方などに対して行われます.

 本トレーニングはまず、脳の状態を知るために、脳波をモニターし周波数解析を行います.その結果をフィードバックしながら、脳活動が良い状態(例えば、リラックスした時に出現するαが優位となった状態になったとき、音や映像で合図をします.その時の脳機能状態が、良い脳の状態であることを知ることができます.

 さらに繰り返し行うことで、自身は自然に感覚として覚えていき(条件付け)、トレーニング場面以外でも定常的に良い脳の状態を保つことができるようになります.

 

 下図は、慢性的に痛みや不安を訴える患者さんの脳波イメージング画像です.

 

 この図からわかることは、θ波といわれる周波数帯域、中でもhigh θ帯域のところと、βといわれる周波帯域において、健常者に比べ、前帯状回、背外側前頭前野、下頭頂小葉そして島といわれる脳領域の高神経活を認めました.

  これらの結果は、慢性的な痛みや不安症状にはこれらが示す領域、つまり painmatrix、近年ではneuromatrixの関与を裏付けるとともに、さらにはこの脳神経活動の周波数パターン毎の脳機能特性を明らかにするものであると考えられます.

 

 これまで私たちは、難治性疼痛を呈した患者さんに対して、ニューロフィードバックトレーニング介入を実施し、その効果を検証しました.その結果、安静時β帯域が減少し、不安や痛みに改善を認めました.

 

・松尾, 兒玉ら, 理学療法科学 30(5), 2015  



Affective neuroscience

※ 応用脳科学に関する取り組みを一部紹介します。

 

 研究 :【無意識下における匂いが及ぼす心身への影響に関する研究】

(日本ロレアル株式会社との共同研究) 

 

 日本ロレアル株式会社との共同研究にて、瞬時に変化する脳の活動状態や心的変化を脳波イメージを用いて解析し、使用者本人が意識する快・不快に影響を与えない程度のごく微量な匂いでも心身に影響するということを世界で初めて明らかにしました.

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 匂いによる刺激が心身にどのような影響を与えるか調べるために、イメージ解析を用いて脳の活動状態を測定 しました.3種類のサンプル「アンモニア臭のあるもの」、「アンモニア臭を軽減したもの」、「アンモニア無配合のもの」を被験者に嗅いでもらったところ、脳のリラックス状態を示す脳波周波数α波帯域の神経活動は、アンモニア臭の量が多くなるにつれ低下していくことがわかりました.
 また、同被験者にアンケート調査による匂いを嗅いだ際の快・不快の主観的評価を行ったところ、「アンモニア臭を軽減したもの」と「アンモニア無配合のもの」では快・不快に有意差は認めませんでした.

 一方、脳神経活動においては、「アンモニア臭を軽減したもの」と「アンモニア無配合のもの」では、リラックス状態を示す α波帯域の神経活動に差を認め、被験者本人が意識する快・不快に影響を与えない程度のごく微量なアンモニアの匂いからも脳は影響を受けていることがわかりました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  さらに、「アンモニア臭のあるもの」を嗅いだ後では不快な感情が表れる右脳に、β波帯域の神経活動を認めることができました.一方、「アンモニア臭を軽減したもの」、「アンモニア無配合のもの」を嗅いだ後はβ波帯域の神経活動が心地良い感情が表れる左脳に認められましたが、これら2つのサンプル間にβ波帯域の神経活動の差を認めたことから、心地よい感情の程度にも差があることがわかりました.

 本研究によって初めて、匂いが感情へ与える微細な影響を脳神経活動レベルで証明することができました.

 

兒玉ら, 日本感性工学会論文誌 18(3), 2019 


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